先物取引とオプション取引
両者はデリバティブな投資方法です。
将来の価格変動リスクを回避することができる先物取引
約束した価格で売買すると損するなら、選択権を放棄することが出来るオプション取引
一般論では、リスクが少なそうに感じますが、資産運用には不向きです。
そもそも、デリバティブってなに?
なぜ、資産運用には不向きなのか?
本記事では、先物取引・オプション取引の仕組みと、資産運用としておすすめしない理由を解説します。
デリバティブとは?
金融広報中央委員会のホームページによると、デリバティブの説明は以下の通りです。
金融商品には株式、債券、預貯金・ローン、外国為替などがあります。
これら金融商品のリスクを低下させたり、リスクを覚悟して高い収益性を追及する手法として考案されたのがデリバティブです。
デリバティブはそれぞれの元となっている金融商品と強い関係があるため、デリバティブという言葉は、日本語では一般に「金融派生商品」とか「派生商品」などと訳されています。
1-1 デリバティブとは? ─ 1 デリバティブってなんだろう? ─ やさしいデリバティブ|知るぽると (shiruporuto.jp)
取引に関しては、
- 債券の価格と関係がある債券デリバティブ
- 金利の水準と関係がある金利デリバティブ
など、商品には多様性があります。
そして、デリバティブの主な特徴は、次の2つです。
相場の局面に合わせた売買が可能
通常、株式などの一般的な金融商品への投資目的には、配当などの収益獲得があります。
また、投資商品の値上がりによって大きな利益が狙えます。
利益を得るための売買の鉄則は、右肩上がりの市場で安く買って高く売るというシンプルなものです。
ところがデリバティブ商品は、右肩下がりの局面で利益が得られるものや、価格が上がりも下がりもしないときに利益を得られるものもあります。
こうした多様性があるため、市場の動向に応じた活用が可能になります。
少ない資金で多く稼ぐ仕組みがある
デリバティブ取引に必要な金額は、比較的少なくてすみます。
理由は、取引当初に証拠金を払い込むだけで取引ができるなど、取引時に発生する金額は原資産の取引よりも少額ですむためです。
さらに少額にもかかわらず、実際に株式や債券などの実物の金融商品を売買したときと同じような効果が得られます。
このような少ない投資金額で大きな取引ができることを「レバレッジ効果」といいます。
レバレッジとは、小さな力で大きなものを動かす「てこ」を意味します。
次は、デリバティブの一種である先物取引・オプション取引について説明します。
先物取引とオプション取引の概要
リスク管理や収益追及を企図したデリバティブの取引として、代表的なものが以下の2つです。
- 先物取引:将来売買を行なうことをあらかじめ約束する取引
- オプション取引:将来売買する権利をあらかじめ売買する取引
一言ではなかなか理解するのが難しいので、それぞれ具体例を挙げて解説します。
先物取引とは?
先物取引とは将来の売買についてあらかじめ現時点で約束をする取引のことです。
現時点では売買の価格や数量を約束し、将来の約束の日が来た時点で、売買を行います。
前もって売買の価格を決めておくことができるので、価格変動する商品の売買につきものの価格変動リスクを回避できるという利点があります。
先物取引の具体例
ぱんだ君は「高級な笹の葉」を見つけ、来年こそはボーナスが入ったら買おうと心に決めました。
価格は10万円だったので日ごろの生活から比べるとちょっと奮発です。
ですが、「高級な笹の葉」は大人気商品で値上がりしていることもあり、来年の価格が気がかりです。
そこで現時点で、「高級な笹の葉」を買うことをあらかじめ予約しておくことにしました。
手付金としてお金を少し支払っておけば、来年の購入は確実!
値上がりの心配が無いから安心!
では、将来価格が変動した場合、どうなるのでしょうか?
値上がりした場合
心配していたとおり、「高級な笹の葉」の価格は15万円に値上がりしていました。
でも予約していたから大丈夫です。10万円で購入できます。
この場合、15万円-10万円=5万円
店頭価格より5万円ほど安く買え、お得!
値下がりした場合
価格は5万円に値下がりしていました。
しかし残念ながら先物取引の予約の取消はできませんから、10万円を支払い買うことになります。
「予約なんてしなければよかった・・・」と思っても、仕方ありません。
この場合、
5万円-10万円=-5万円
店頭価格より2万円ほど多く支払わなければならず、損…
このように、確実に手に入れたい商品に対しては、リスクヘッジ(将来の不確実性に対して、不安を排除する)する利点はありますが、その将来自体がどうなっているかは誰にも分からないのがポイントです。
次に、オプション取引についての説明です。
オプション取引とは?
オプションとは、自分の都合に合わせて使うか使わないか決められる選択権のことです。
携帯電話やスマートフォンに、「オプションを追加するかどうか」といった類いのものです。
デリバティブのオプションも同じように、選択権です。
例えば、金融商品をあらかじめ決めておいた価格で売買するかしないかを選べる権利です。
ただし、このオプションは、無料のサービスとはいかないので、権利を手に入れるためには一定の金額を支払わなければなりません。
オプション取引の具体例
ぱんだ君は「笹の葉株式会社」の株式を購入したいと考えています。
現在の株価は1株1,000円なので100株ほど購入するとなれば、100,000円が必要です。
しかし、残念ながら資金の目途がつくの1ヵ月後です。
ぱんだ君は1ヵ月後の株価はもっと値上がりしているかもしれないと心配ですが、値下がりして損をする可能性もあり、1株1,000円で買うという約束はしたくありません。
そこでぱんだ君は、「1ヵ月後に1,000円で株式を購入できる権利」だけを買うことにしました。
買っても、買わなくてもどっちでも良いんだ!
1,000円で買うこともできるし、買わなくてもいい権利です。
買うか買わないか、このとき選択の基準となるのは、そのときの「笹の葉株式会社」の株価です。
値上がりした場合
1ヵ月後、心配していたとおり、株価が2,000円に上がりしました。
このとき株式を取得するためには、値上がりした2,000円で購入するよりも、以前約束した「1,000円で買う権利」で購入するほうがいいですね。
この場合、
2,000円-1,000円=1,000円
その時の株式市場で買うよりも、1株あたり1,000円ほど安く買えるからお得!
値下がりした場合
1ヵ月後の株式市場では、500円に値下がりしました。
この場合は、「1,000円で買う権利」ではなく、通常の売買のとおり市場価格で買えばよいです。
ただし「1,000円で買う権利」を手に入れるために支払った代金はムダに…
先物取引とオプション取引は将来の売買に関する取引という点でよく似ています。
先物取引が将来売買する「約束」なので約束の価格と売買時の市場価格の関係によって利益とも損失ともなりうるのに対して、オプション取引は売買できる「権利」を購入することなので、売買で得をするときだけ権利を行使し、損をするときは権利を放棄すればよいという流れです。
先物・オプションを資産運用でおすすめしない理由
前述したような、先物・オプション取引の仕組みを踏まえた上で、
おすすめしない理由は以下の2つです。
相場を予想する投機的な要素が強い
先物取引やオプション取引の本来の機能は、商品の購入に対し価格変動リスクをヘッジ(回避)するというものです。
取引対象は、日経平均や株価指数も含まれ、この取引を用いることで金融商品の価格変動リスクが下げられるという使い方があります。
しかし、実際にはその商品の将来の価格を予想する、金融商品として利用されています。
将来の相場は誰にも分かりません。
つまり、先物取引で価格変動リスクを下げようとすることで、結果的に相場による損得が生じる、丁半ばくち状態になっているのです。
レバレッジによる損失の危険性
この手の商品は、将来の約束をするだけなので、実際に取引金額分のお金を持っていなくても、取引可能です。
ただし、さすがに手持ち資金ゼロでも良いわけでは無く、一定の「証拠金」を納める必要があります。
その証拠金だけで、大きな金額を取引できるのです。
結果、予想が当たった場合は、掛け金にレバレッジ(てこ)がかかり、大きなリターンが得られます。
逆に予想が外れると、損失も大きくなります。
含み損が生じて証拠金の余力が一定水準となった場合は、強制的に先物取引を解消する「ロスカット」の設定もあります。ただし、特に高いレバレッジをかけて急激な値動きがあった場合、ロスカットが間に合わず、証拠金以上の損失が生じる場合があります。
まとめ
投機家であればまだしも、投資で着実に資産運用したいのであれば、先物・オプション取引には手を出さないほうが無難です。
資産運用には、初心者であれば低コストの投資信託、中級者以上ではリバランスやローテーション、コア・サテライト戦略でETFを活用するのがおすすめです。
そして、サテライトとして、レバレッジをかけた商品の購入が良いでしょう。
ただし、投資自体がリスクを伴うものなので、リスク許容度に応じた商品を選択してください。
最後に、投資は自己責任でお願いします。
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