全世界株式に投資をする際に、まず候補に挙がるのがeMAXIS Slim 全世界株式やVTです。
これらはどちらも魅力的な投資商品なのですが、違いがよくわからない方もいるはずです。
実は、全世界株式と一言で言っても投資信託かETFかだけではなく、指数やコストなどで両者には違いがあります。
そこで今回は、eMAXIS Slim 全世界株式と「VTを徹底比較し、結局どちらがおすすめなのかをご紹介します。
どちらもほとんど同じでは?と思われている方は必見です。
eMAXIS Slim 全世界株式とVTをざっくり比較
まずは両者をざっくり比較してみましょう。
eMAXIS Slim全世界株式
- 信託報酬 0.11%
- 純資産 13,055百万円
- 購入手数料 0円
- 売却手数料 0円
- 分配金 なし
VT
- 経費率 0.08%
- Fund total net assets $19.1 billion
- 購入手数料 0円+為替手数料0.25%(SBI・楽天証券は買付手数料無料)
- 売却手数料 最大22米$+為替手数料0.25%
- 分配金 年4回
信託報酬と経費率は一見すると大きく変わりありません。
純資産総額はどちらも申し分ないです。
しかし、手数料や分配金の有無はそれぞれ異なります。
また、連動する指数もそれぞれに違いがあるのです。
そこで、連動する指数やコスト、過去のリターンを踏まえて比較していきましょう。
指数・コスト・リターンを徹底比較!
- 連動する指数
- コスト(信託報酬と経費率)
- トータルリターン
の3つを比較していきます。
「eMAXIS Slim 全世界株式」には
- オールカントリー
- 除く日本
- 3地域均等型
の3種類があります。
今回はeMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)で比較します。
連動する指数の比較
インデックスファンドは「定められた指数(インデックス)」を目印として、その動きに連動するよう運用されています。
そのため、どのような指数に連動するかによって、ファンドの成績が変わってきます。
よって、同じ全世界株式といっても、構成銘柄数とカバー率がそれぞれ異なります。
まずは「連動する指数」の違いを確認します。
eMAXIS Slim全世界 | VT | |
指数 | MSCI | FTSE |
特徴 | 大型株中心 | 大・中・小型株 |
銘柄数 | 約2,500銘柄 | 約8,000銘柄 |
カバー率 | 時価総額85%カバー | 時価総額98%カバー |
「eMAXIS Slim 全世界株式」が連動する指数は「MSCI」
「VT」が連動する指数は「FSTE」
MSCIは大型株のみを投資対象としており、約3,000銘柄を投資対象としています。
FSTEは小型・中型株もカバーしており、約8,000銘柄を投資対象としています。
eMAXIS Slim全世界株式が目指しているインデックスがカバーするのは中大型株で時価総額に占める割合は85%です。
VTが目指しているインデックスは「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」で、時価総額に占める割合は98%です。
2つの指数をまとめた図をみると、FTSEのほうがより分散された投資先であることがわかります。
そのため、「世界の株式をまるごと保有したい」という人にとって、VTは魅力的な選択肢です。
しかし、ここで注意が必要なのは
「市場を広くカバーできる=パフォーマンスが高い」わけではない
ということです。
小型・中型株が含まれているということは、逆に言えば大型株の比率がその分下がっているということです。
そのため、大型株が市場を牽引するような場面では、MSCIにリターンが劣る可能性は十分あります。
そこで、今までの利益の違いはどうなのか?を知る必要があります。
トータルリターンについても後述します。
コスト
2つ目の比較項目は「コスト」です。
コストは投資のパフォーマンスに直接的に影響を与えます。
よって、コストが低い商品を選ぶのが定石です。
信託報酬は基本手数料に加え、実費別途清算により、実際の経費は高くなります。
Expense ratio(経費率)は過去1年でかかった実際の経費(事後報告)です。
まずは、買い付け・購入手数料を確認し、信託報酬と経費率を比較しましょう。
購入・売却手数料は?
SBI証券や楽天証券であれば、購入手数料がどちらも0円となっています。
売却手数料はVTで最大22米ドルほどかかってしまいます。
そして、ETFなので売買時に為替手数料も発生します。
よって、購入・売却手数料はeMAXIS Slim全世界株式に軍配が上がります。
信託報酬とExpense ratio(経費率)は違う
2021年4月時点でのコスト(信託報酬)は以下の通りです。
eMAXIS Slim 全世界株式:信託報酬 年0.1144%
VT:経費率 年0.08%
※数字は2021年4月時点
あまり差が無いように感じますが、「eMAXIS Slim 全世界株式」の方には隠れコストが存在します。
その信託報酬+隠れコスト=年0.209%です。
だいぶ差が出てきてしまいました。
これが20~30年となると結構な差が生まれます。
どう運用するかでコストの負担が異なる
仮に100万円を投資した場合、VTの0.08%(800円/年)とeMAXIS Slim全世界株式の0.209%(2090円/年)(推定)で為替手数料分のコスト差はおよそ5年で埋まります。
課税口座で運用するならば、eMAXIS Slim 全世界株式が有利となります。
SBI証券や楽天証券では、国内ファンドに対し、保有額に応じてポイントが還元されるのもメリットです。
外国税額控除を適用して運用した場合は、若干VTが上回ります。
ちなみに、同程度のリターンが期待できる場合、運用年数が長くなるほど、ほとんど差が無くなります。
トータルリターンを比較
最後にリターンを比べていきます。
前述したように、両者は指数が異なるため、トータルリターンが異なる可能性があります。
ただ、eMAXIS Slim全世界株式のほうが2018年と設定日は浅いため、比較するのは過去3か月と1年トータルリターンとします。
以下が過去3か月トータルリターンの比較です。
eMAXIS Slim 全世界株式:+9.34%
VT:+5.26%
※2021年4月時点
以下が過去1年トータルリターンの比較です。
eMAXIS Slim 全世界株式:+51.27%
VT:+53.83%
※2021年4月時点
どちらも十分なリターンが得られています。
短期的には大型株中心か否かでリターンに違いがありそうですが、
過去1年のリターンを考えると、「長期的な差はほとんどな可能性が高い」といったところです。
結局どちらがおすすめか
まず、初心者におすすめなのは、間違いなくeMAXIS Slim全世界株式です。
そもそも海外ETFを買い付けるには、外国株式口座を開設しなければならないので、そこで敷居の高さを感じる方もおられるからです。
ただ、コスト面やリターンではほとんど差が出ないことが予想されます。
よって、円ではなく、ドル建てしていきたいと考える方
外国税額控除で運用可能な方
配当金が欲しいという方
以上のような方は、VTを検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
信託報酬と経費率の観点からかなり有利な外国ETFですが、国内ファンドの低コスト化により、課税コストを考慮すると、どちらもほぼ同等の投資先と言えます。
よって、「長期リターン・分散・低コスト」どの面においても、両者は十分魅力的な投資先です。
また今後、経費率や信託報酬のさらなる引き下げもありえるかもしれません。
私個人としては、興味としてより広く分散された投資先としてVTも保有し続けています。
初心者にはeMAXIS Slim 全世界株式をおすすめしましたが、どちらが長期的に優れているかは誰にもわかりません。
ただ1つ言えるのは、資産形成としてだけなら、無配で税制上有利なeMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)で十分ではないかと思われます。
本記事の内容は、あくまで個人的な見解です。
投資はあくまで自己責任でお願いします。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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